はじめに
肩こりや腰痛で湿布を貼った経験がある方は多いでしょう。一般的な湿布は患部で作用し、痛みを和らげたり炎症を抑えたりします。しかし、近年では皮膚から成分を吸収し、全身に作用する貼付剤も登場しています。
効果が高い分、副作用のリスクもあるため、使用には注意が必要です。私自身、緩和ケアに携わり、鎮痛剤について学んできた経験から、今回は 「局所貼付鎮痛剤」と「全身貼付鎮痛剤」 の違いや注意点について解説します。
ぜひ最後までお読みください。

目次
1. 局所貼付鎮痛剤とは?
痛みがある部位に直接貼るタイプの鎮痛剤で、主に以下の2種類に分類されます。
①パップ剤(湿布)
冷感タイプ(患部を冷やした方がよい場合)
代表例:MS冷湿布、モーラスパップ、アドフィードパップ
副作用:かぶれや痒み
温感タイプ(温めた方がよい場合)
代表例:MS温湿布 など
副作用:かぶれや低温やけど
②テープ剤(薄いタイプの湿布)
特徴:パップ剤より皮膚からの吸収率が高く、効果も強い
代表例
モーラステープ:光線過敏症のリスクあり
ロキソニンテープ
ロコアテープ(2016年発売)
変形性関節症に適応
1日2枚まで(内服薬と同程度の効果)
一部のニューキノロン系抗生剤との併用禁忌
副作用:皮膚炎(5%以上)
2. 全身貼付鎮痛剤とは?
皮膚から成分を吸収し、全身に作用する貼付剤です。患部に貼る必要はなく、胸部・腹部・上腕部・背部・腰部・大腿部などに貼ります。市販薬はなく、すべて医師の処方が必要です。
①ジクトルテープ75mg(成分:ジクロフェナクナトリウム)
特徴
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
貼る部位は患部でなくてもよい
1日3枚まで(3枚で内服薬と同等の血中濃度)
適応症
もともとはがん疼痛のみ → 現在は腰痛・肩痛にも使用可
主な副作用
皮膚の痒み、上腹部痛、肝機能障害、血圧上昇
重篤な副作用:アナフィラキシー、消化性潰瘍、喘息発作、横紋筋融解症
注意点
過剰使用で血圧上昇・頻脈・動悸が起こることがある
②ノルスパンテープ(成分:ブプレノルフィン)
特徴
オピオイド系鎮痛剤
7日ごとに貼り替え
効果発現まで約3日
適応症
NSAIDsで鎮痛困難な腰痛・変形性関節症
主な副作用
眠気、めまい、ふらつき(運転注意)
重篤な副作用:呼吸抑制、依存
規制
第二種向精神薬・習慣性医薬品・14日制限
処方医は専用e-Learningの受講が必要
調剤時、薬局で確認が必要
③フェンタニルテープ(成分:フェンタニル)
特徴
麻薬系鎮痛剤
もともとがん疼痛用 → 2014年から慢性疼痛にも適応拡大
適応症
がんの疼痛管理(特に経口薬が困難な場合)
慢性疼痛
主な副作用
傾眠(5%以上)、悪心、嘔吐、便秘
重篤な副作用:呼吸抑制、依存性
3. 局所貼付鎮痛剤と全身貼付鎮痛剤の違い
局所貼付剤 | 全身貼付剤 | |
作用部位 | 貼った部位のみ | 全身 |
効果の強さ | 中程度 | 高い |
副作用の範囲 | 局所(皮膚炎など) | 全身(血圧上昇・呼吸抑制など) |
貼る場所 | 痛みのある部位 | どこでも可(胸部・背部など) |
市販薬 | あり | なし |
4. まとめ
貼り薬は手軽に使える反面、正しく使わないと 副作用のリスク があります。
局所貼付剤 → 皮膚トラブルに注意
全身貼付剤 → 貼りすぎ厳禁!内服薬と同様の副作用が出る
また、貼り薬はあくまで一時的な対処療法 であり、根本的な痛みの原因を取り除くものではありません。
WHOの「トータルペイン」の考え方では、痛みは 身体的・精神的・心理的・社会的 要因が複合的に関与しています。痛みがなかなか治らない場合は、生活習慣や仕事、住環境、人間関係なども見直してみることが大切です。
では、次回のブログでお会いしましょう!
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