
昨年末に承認された認知症新薬「レカネマブ(商品名:レケンビ)」がいよいよ臨床現場に登場します。国立長寿医療センターは2024年2月13日から投与を開始するとホームページで公表しました。
今回はこのレカネマブについてどのような人が使用すべきか、効果はどうなのか、副作用はどのようなものがあるか等を私見も交えて記載します。果たしてこの薬が認知症治療を大きく変えることができるのか、、
まずはレカネマブのプロフィールから
販売名
レケンビ点滴 静注200mg
レケンビ点滴 静注500mg
効能又は効果
アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制
作用機序
変異型アミロイド前駆体タンパク質を発現するマウスにおいて、脳内のアミロイドβプロトフィブリル及びアミロイド斑を減少
用法及び用量
レカネマブとして10mg/kgを、2週間に1回、約1時間かけて点滴静注
効能又は効果に関連する注意
疾患の進行を完全に停止、又は疾患を治癒させるものではない
11. 副作用
重大な副作用
アミロイド関連画像異常(ARIA)
脳浮腫/滲出液貯留(12.6%)、
微小出血及びヘモジデリン沈着(13.6%)、脳出血(0.4%)
その他の副作用
1%以上 過敏症、頭痛
0.5~1%未満 倦怠感、皮疹、注射部位反応
0.5%未満 紅斑、めまい、平衡障害、錯乱 状態、抑うつ症状、記憶障害
相互作用
血液凝固製剤(ワーファリン、ヘパリンナトリウム等)
以上、添付文書から一部抜粋し記載しました
以下、私見を記載します
まずは対象者について
適応が「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症」のため進行した認知症の患者、または重度の認知症の患者は適応外となります
また中等度の認知症患者も使えません
介護保険認定の際の認知症高齢者の日常生活自立度で言えば、主観ですが、IかせいぜいIIa位までではないでしょうか(認知症高齢者の日常生活自立度:I〜Ⅳ、M)
現在の医療現場を見ていると、対象者はかなり少ないと思われます
次に作用機序、効果に関して
作用を簡単に言うと、神経細胞へのアミロイドβの付着を抑える、と言うことになります
つまり、すでにあるアミロイドβは減らさない、新しくできるアミロイドβは防げる、と言うことになります
中等度以上の患者に適応がないことも整合性があります
効果は、国際共同第Ⅲ相試験(301試験)から、患者898例、プラセボ897例を対象
主要評価項目SDRスコア
ベースライン レカネマブ群 3.17 プラセボ群 3.22
18ヶ月後 レカネマブ群 1.21 プラセボ群 1.66
プラセボとの差 -0.45(P <0.0001)
臨床症状の有意な悪化抑制効果が認められとあるが、抑制率は27.1%
果たしてこの差が臨床現場で実感できる差になるのか、、
副作用に関して
国際共同第Ⅱ相試験(201試験)によると、856人に投与し、注入部位に対する反応20%、頭痛13.7%、脳浮腫9.9%、下痢8.1%、、
となっております
臨床で使用されるようになれば更に多い方に使うことになります
未知なる副作用の可能性もゼロではありません
また約10%近い方に脳浮腫が出現するのは注意が必要でしょう
以上からレカネマブは使用対象者が少なく、リスクも大きいため認知症治療を大きく変えることにはならないと個人的には思います。
またレカネマブの薬価、年間298万円(体重50kg)もブレーキ要因ではないでしょうか。
しかし適応がある対象者が正しく使用し症状軽減、または悪化を遅らせることができれば患者および家族にとっては良いことだと思います。
いずれにせよ今後の認知症治療の動向を見守りたいと思います。
では次回のブログで。
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