先日、目黒区の小学校で女児児童2名がオーバードーズで病院に搬送されたという報道を見ました。私も目黒区の小学校出身なので、他人事ではないと感じたので今回はこのオーバードーズについて記載します。
オーバードーズ(過剰服用)とは、睡眠薬や風邪薬などを大量・頻回に服用することです。OD(オーディー)等と略して呼ぶこともあります。
これまでは精神科や薬物依存症者の領域でしか耳にしなかったこの言葉は今や一般的になりつつあり、若者の間ではかっこいいとも言われているようです。
私がこのニュースを聞いた時に疑問に思ったことが2つあります
1つは、なぜ小学生が市販薬をオーバードーズしたのか、ということ
もう1つは何の薬か、ということ
記事では、きっかけの詳細は書かれていませんでしたが、おそらく学校や友達関係で悩んでいたのではないか、と推察されます。市販薬を選択したのは、薬局で手軽に購入できるからではないかと思われます。違法薬物を入手するまでには至らなかったのでしょう。現在の日本を象徴しているように思います。
もう一つの疑問は、何の薬なのか
市販の薬ということでおそらく成分にジヒドロコデインリン酸塩やメチルエフェドリン等を含む風邪薬や咳止め薬ではないかと思われます
ジヒドロコデインリン酸塩は、リン酸コデインを化学変化させた成分で、リン酸コデインは容量規格により麻薬に指定されています
またエフェドリンは覚醒剤の原料となります
オーバードーズされやすい薬の成分は、リスクの高い薬物を薄めた薬物、と言えます
おそらくこの児童は死にたい、と思ってオーバードーズしたと思われるますが、ほとんどの市販薬は大量に服用しても死ねないのです
なぜか、、
2つの点から説明します
まず1つは薬の吸収率
薬物にはそれぞれ決まった「吸収率」が存在します
例えば、ある薬物を100mg服用し吸収された量が1mgだったすると、その薬物の吸収率は1%となります(薬剤の吸収率は薬の説明書(添付文書)に記載されています)また体側の条件もあり、大量に薬を服用したとしても体内に入る量は限られています。
2つ目は致死量に関して
薬は開発される際、どのくらいその薬を飲めば死ぬかを動物で実験しており、「50%致死量」や「概略の致死量」と呼ばれた値で表されます
(リン酸コデインリン酸塩水和物10% 50%致死量(LD50) 191mg/kg)
その値を基に毒性が発現するはるかに低い用量で常用量が設定されます
市販薬ではさらに低い値で用量が設定されます
以上2点を勘案すると、市販薬のオーバードーズで死亡するためには、体内に大量に薬物が吸収された後その量が致死量を超える必要があります
かなり低い確率だと思われます
今回、小学生がオーバードーズをした背景を見直し、子供が夢を持って生きていける社会を実現していくことが重要ではないかと感じています。
また薬をそのツールとして選択した事は非常に残念だと感じています。薬局で気付き、止められる社会になれば薬剤師の社会貢献度合いが上がると思います。
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